悪戯をして捨てられてしまった子供é

・・・プロローグ・・・
第０話　「ギンギ・ラ・ギン」
世界の果てにある町「ツルマチ」に
独りの男の子が生まれた。
彼の名はギンギ・ラ・ギン。
彼には生まれつき顔が無かった。
正確に言うと彼には
顔が無いわけでは無い。
彼の顔はあるにはあるが
まるで「矛盾」そのものであった。
人の心の奥底を映し出すかのように
彼の顔は
見る人によって様々な顔に
見えるのであった。
ある者は彼の顔を
「神のようだ」と言い、
ある者は彼の顔を
「悪魔のようだ」と言い、
ある者は彼の顔を
「赤ん坊のようだ」と言い、
ある者は彼の顔を
「老人のようだ」と言った。
ギンギ・ラ・ギンは
生まれながらのこの顔を呪っていた。
何をしているわけでも無いのに
気味悪がられ、恐れられるこの顔が
憎かった。
ギンギ・ラ・ギンは
自分の顔がわからなかった
何度鏡を見ても真っ黒にモヤが
入って見えるのだ。
そしてその黒いモヤの中に
見えてくるのは
「ツルマチ」の人々の光景であった。
ある日ギンギ・ラ・ギンは
鏡に見えるものを
朗々と唄いだした。
何もかも見通した彼の言葉は
「ツルマチ」の人々を
さらに怯えさせて行くのであった。
彼の唄は悪魔の唄と言われた。
果たして彼は
本当に悪魔なのであろうか？
それとも・・・。
それでも唄い続ける日々は続き
やがてギンギ・ラ・ギンは
一つの悪戯を思いついた・・・。
たった一つの悪戯を、
思いついたのであった・・・。